顔面神経麻痺
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顔面神経麻痺
エッセンス
顔面神経麻痺は、顔面の筋肉を動かす顔面神経(第7脳神経)に麻痺が生じる病気です。
中枢性のものと末梢性というふうに分けられ、多くが末梢性の顔面神経麻痺で耳鼻咽喉科が担当して診断・治療を行います。末梢性の顔面神経麻痺は、顔面神経が脳(脳幹)から出た後に側頭骨という骨の中を通りますが、その途中の膝神経節という部分でのヘルペスウイルスの再活性化が原因でおこることが多いとされています。ヘルペスウイルスの再活性化は、重労働・かぜ・栄養失調など体に何らかのストレスがかかった後のストレス応答として出現します。中枢性のものは、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などを原因として起こり、疑いがあれば神経内科・脳神経外科へ紹介させて頂きます。
顔面神経麻痺の発症の仕方には、大きく分けて3つあります。これに稀ですが生まれつきの顔面神経麻痺がおこることがあり、それを加えると4つになります。
(1)急に麻痺が生じる場合
「朝起きたら顔が動かない」、「気がついたら目が閉じにくくなってきた」、「うがいをすると口の端から水がもれる」ということで気づいて受診されることが多いです。発症の何日か前から耳後部痛(耳の後ろ側の痛み)を訴える方もいます。最も多いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるそれぞれヘルペスウイルスの一種の単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルスが顔面神経で再活性化して始まります。その後、ウイルスにより神経が腫れるのですが、顔面神経は周りを側頭骨の骨で囲まれているために逆に絞扼される(しめつけられる)形となり、神経の周りの血流が乏しくなります。このウイルスによるダメージと血流不全のダメージのダブルパンチで、徐々に神経の変性が進んでしまい約1週間かけて悪化してきます。
脳卒中でも急に顔面神経麻痺になることがありますが、多くは呂律が回らなくなったり、頭痛、意識障害、手足の麻痺やしびれなどの症状が合併します。脳卒中が原因であれば、一刻も早い治療が必要ですので、神経内科・脳神経外科や救急科を受診することをお勧めいたします。
(2)外傷後や外科手術の後に麻痺が生じる場合
交通事故など頭を強くぶつけた際に、骨折が顔面神経が通っている顔面神経管に及ぶと顔面神経麻痺が生じます。神経の損傷の程度により即時手術が必要になることがあります。聴神経腫瘍や小脳腫瘍などの脳腫瘍摘出のための手術、中耳真珠腫摘出のための手術、耳下腺腫瘍・癌などの摘出のための手術などに伴い顔面神経が損傷した場合には、術後に顔面神経麻痺が生じます。
(3)ゆっくりと麻痺が生じる場合
特殊な神経変性疾患や膠原病など血管の病気によって、顔面神経にゆっくりと障害が生じて、顔面神経麻痺が進むことがあります。また、耳下腺の悪性病変や聴力の低下も伴う聴神経腫瘍によって麻痺がおこっている可能性もありますので、まずは耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。
(4)生まれつき麻痺が認められる場合
胎児期の顔面神経の発生過程での障害、あるいは出産時の外的要因で、顔面神経麻痺が生じることがあります。出産後早期は気づきにくく、成長とともに明らかになって受診するケースもあります。
100以上の生まれつきの原因が特定されておりますが、特定できない場合もあります。顔面神経麻痺の症状以外にも、他の症状伴うことも多く、耳鼻咽喉科だけでなく小児科などで専門的な診断を受けてください。
一口に「顔面神経麻痺」と言っても、顔の表情を構成する筋肉は20個以上あるので、顔面神経麻痺の程度により、様々な症状があります。よく訴えられる症状は、「顔がまがった状態」、「眼が閉じにくい」、「口角が上がらない」、「水や食事が口から漏れる」などです。
また、顔面神経は側頭骨の中を通る間にいろいろな枝を出します。例えば味覚を伝える神経(鼓索神経)、涙や唾液の分泌を調節する神経(大錐体神経)、大きな音から耳を守るために鼓膜を緊張させる反射を起こす神経(アブミ骨筋神経)などが含まれているので、顔面神経麻痺の際には、表情筋の麻痺以外に、味覚の障害、涙や唾液の分泌低下、音が響く聴覚の障害などの様々な症状が伴います。
顔面神経麻痺のどこに障害があって、どの程度進んでいるのかを調べるために、味覚検査(電気味覚検査、ろ紙ディスク法)、涙液・唾液量測定、耳小骨筋反射などの検査を行います。
顔面神経麻痺の程度を評価するには、額のしわ寄せ、眼を強く閉じる、口笛を吹くなどの顔面の動きを観察し、正常と比べ、どの程度麻痺しているかを点数で表す顔面神経スコアでの評価が一般的に行われています。このスコアの推移をみることで、顔面神経麻痺の経過をみることも可能です。
また、筋電図を用いた検査を行うことによって、神経の障害の程度や表情筋の動きの程度を客観的に知ることも大切です。
薬物治療として第一選択はステロイド(副腎皮質ホルモン)になります。これにヘルペスウイルスの再活性化が疑われる場合は抗ウイルス薬を追加します。
ステロイドは抗炎症・抗浮腫効果を持つ重症化防止薬ですが、発症2週以降の変性した神経の回復には寄与しないので、できるだけ発症早期にステロイドの治療を行うことが肝心です。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を阻害しますが増えたウイルス自体を殺すことはできないとされていますので、症状に合わせて投与するかを決定します。重症の方やステロイドの合併症が懸念される方(高齢、糖尿病、高血圧など)には入院が望ましいため、連携病院をご紹介します。
また薬物治療を行っても発症1週間目の筋電図検査にて神経損傷が激しい場合は、顔面神経減荷術という手術を行うこともあります。
顔面神経麻痺の治療には、顔のリハビリテーションやマッサージが有効なため指導いたします。全体の約15%程度の患者さんで発症から半年~1年経過後も麻痺が持続し後遺症が残ると言われています。主な後遺症としては顔面のひきつれ(拘縮)と目を閉じたときに一緒に口が動いてしまうなどの病的共同運動があげられます。顔面神経麻痺のリハビリは筋力を強化するためではなく後遺症を予防するためですから、あせらず・じっくり・長期に行うことが大切で、マッサージのやり過ぎや低周波治療器などの電気刺激はかえって顔面拘縮や病的共同運動を助長してしまうため、控えてください。